01-10;腎臓性器 夜尿症
おむつはずし
始める条件(そろうのは2歳すぎ)
- 上手に歩け、かけ出すこともできる。
- おしっこの間隔が2時間以上空くことが多くなる(特にコレ)
- 言葉や指差しなどで自分の意志をしっかりと伝えることができる。
- まず子供がおしっこをした瞬間を見抜く;子供に排尿を意識
- 次に「出そうかな」の時にトイレやおまるに誘う
- 出た時に、子供が「出た」と教えるようにして、褒める。
- おしっこが出る前に教えるようになるのを待つ。
病気を疑う時
- 尿線に勢いがない;男性では包茎、女児では陰唇癒合が疑われる。
- 昼間遺尿がなかなかよくならない;男児では尿道憩室、女児では尿管異所開口、尿道憩室を疑う。
排尿に関する発達
- 1歳6カ月;興味を持って自分の排泄物を見る。
- 1歳6カ月〜2歳;排泄した後で「チーチー」と言って知らせる。
- 2歳6カ月;排泄する前に教えることがある。
- 3歳過ぎ;夜のおむつが不要になり、昼間に自分でパンツを脱いで用を足す。
- 3歳6カ月〜4歳;自分でトイレに行き、大人が手をかけなくなる。
- 4〜6歳;自分で排泄物の始末ができるようになる(トイレに大人がついて行かなくてよい)のは、4歳6カ月ごろが多い。
尿検査
タンパク尿
- 小児では起立性(体位性)タンパク尿を呈する場合はよくある。早朝第一尿で評価するのはそのため
- 蛋白尿は血尿に比べてより大きな病的意義を持つ可能性がある。
- 明らかな蛋白尿を認める場合には、尿中β2ミクログロブリン、NAGなどの尿細管機能の評価も重要。
血尿
- 小中学生の約1%に顕微鏡的血尿を認めるが、長期予後はほとんど良好。
- 肉眼的血尿を呈した場合の基礎疾患として腎尿路結石や慢性腎炎を持つ場合が多いが、稀にWilms腫瘍などの悪性腫瘍例が存在する。肉眼血尿の確定診断は困難な場合が多い。長期予後はほとんど良好であり、患者に負担の多い検査を次々とすることは勧められず、過度な運動制限や生活制限はかけない。治療はない場合が多い。(2)
- 血尿を認める頻度は蛋白尿を認める頻度の2〜3倍。
- 小中学生では3次健診まですすんだうち腎炎は1%弱、尿路感染症を2%弱認める。
検査
- 三次検査;末梢血一般、総蛋白、アルブミン(2.5g/dl以下の場合は早期介入が必要)、総コレステロール、クレアチニン、尿素窒素、ASO,IgA,C3
水腎症
- 先天性水腎症の約半数では腎盂尿管移行部の成長とともに水腎症が改善する。
尿路感染症
- 乳児期発熱の6〜8%を占める。尿路感染症罹患児の30〜50%が膀胱尿管逆流症含め腎尿路奇形を有するといわれる。
- 男児で腎盂腎炎であれば後部尿道弁の存在を考える。
- 尿中菌数10e5/ml以上を基準とする。
膀胱尿管逆流症
- 排尿時膀胱尿道造影で診断確定。排尿時に尿管が造影できればVURと診断する。
- 乳児にはしばしば生理的にみられるが、その多くは成長とともに自然消失。
- 小児の尿路感染症における膀胱尿管逆流の保有率は30〜50%と高い。
- 逆流の程度が高度なもの、腎杯の変形など腎障害がすでに存在すると外科治療を行う。10歳以上は自然治癒する可能性が低く、成人では手術の適応となる。
腎炎
- 糸球体に由来する蛋白尿は、糸球体基底膜の障害を意味し、血尿はメサンギウム細胞ないし領域の障害を意味する。
- 低補体血症を示す腎炎;急性糸球体腎炎、ループス腎炎急性期、膜性増殖性腎炎
溶連菌感染後糸球体腎炎
- 小児では予後がよく、90%が治癒し、急性期死亡は1%未満、慢性化も2%未満。
- 咽頭炎後10日前後、皮膚感染症後20日前後を経て、浮腫、乏尿、高血圧で発症する。血尿はほぼ100%で3分の1は肉眼的血尿、蛋白尿は80%前後に認めるがネフローゼ域に達するものは少ない。
- 治療は食事療法(塩分制限)、薬物療法(利尿薬、降圧薬)が基本で、多くは5〜10日間の急性期の後に利尿期に入る。低補体血症は6〜8週、蛋白尿は2〜3ヶ月、血尿は4〜6ヶ月程度で自然消失することが多い。(3)
- 多くはA群4型、6型、12型、25型の溶連菌感染で、特に12型。
- 罹患頻度は2歳までは少なく3〜10歳に好発し、平均は7歳。
- 約1.5%に高血圧性脳症を認める。
- 血尿の方が浮腫よりも長く持続する(1〜2ヶ月)。浮腫の程度はネフローゼよりも軽い。
微小変化群
- 高度蛋白尿 浮腫 8割は6歳未満。
- 小児ネフローゼ症候群では70〜80%、成人ネフローゼでは20〜30%を占める。
- 小児の鑑別では巣状糸球体硬化症
- ステロイドの反応は良好(80%以上で4週間以内に蛋白尿消失)であるが、再発も多い(40〜60%が感冒などを契機に)。幼児期に再発を繰り返しても思春期を過ぎると再発は少ない。
- 寛解が維持されるまでは運動制限がある。
夜尿症
- 睡眠中不随意に排尿。5歳以上で、少なくとも週に2回以上、3か月以上持続。
- 夜と昼の両方でおもらしをするのは(尿失禁)、遺尿症(enuresis)である。
疫学 病態生理
- 1か月に1〜2回程度まで含めると幼稚園で約15%(5歳児で20%)、小学校低学年で10%、高学年で5%前後となる。9〜10歳以降減少する。治癒のピークは女児で10〜11歳、男児で12〜14歳。(1年ごとの自然治癒率は10〜15%ずつ)
- 覚醒障害、膀胱用量の減少、抗利尿ホルモンの分泌不全などが背景
診断
- 生来夜尿がある場合には、泌尿器的、神経的、鑑別が必要。夜尿がなかったのに再発した場合には尿量が増える疾患や多飲や糖尿病が鑑別。
- 夜中に起こした時に1分以内に立ち上がれるか(覚醒は?)、夜間および早朝尿の浸透圧、尿を我慢した時の容量などがチェックのポイント。
鑑別
- 尿β2MG、浸透圧、沈渣
- 血液検査(肝腎機能、電解質)、頭部CT(下垂体のあるトルコ鞍部)、脳波、尿流曲線(不安定膀胱の有無)、心理検査、腰部MRI(潜在性二分脊椎の有無)
治療
- 特に就寝前1時間は水分摂取を我慢する(早朝に夜尿がある場合は効果的)(飲水の膀胱到達に2〜3時間かかるため、寝る前少なくとも2時間以内の飲水はたとえトイレで排尿を試みても就寝前には排出されない)
- 就寝前の入浴、寝具を暖める、電気毛布も試し
- 抗利尿ホルモン(ミニリンメルトOD錠);夜間の尿量が多い場合
- 三環系抗うつ薬(アナフラニール>トフラニール<トリプタノール)10mgから使用;心毒性?
- 抗コリン薬(ポラキス);抗うつ薬と併用。25kg以上であれば2mgが2錠。便秘に注意。頻尿で膀胱容量が少ない場合有効。
- 尿浸透圧の低い(<800〜1000mOsm)尿比重の低い(<1.022)にデスモプレシン鼻腔投与(鼻炎があると効果不安定;上記へ移行。
- 膀胱抑制訓練;目標200〜350mL(最初の我慢は5分くらいからはじめ、30分を目標に)
- アラーム療法;パンツに水分を感知するセンサーをとりつけ、夜尿時にアラームが鳴ったり、バイブレーションが作動したりする器械を活用するもので、続けると条件反射で膀胱容量が大きくなると考えられている。夜尿時にトイレに連れて行き完全排尿させる。本人が起きない場合が多く、親が起こさなければならないので、親の協力が不可欠である。(目的は夜尿時の警報音により排尿を中断させ、夜間膀胱容量を増加させることであり、覚醒排尿させることではない)
- 治療の効果判定は、生活指導のみで数カ月で20%が改善。デスモプレシン薬で70〜80%、アラーム療法で50〜65%が改善する。
参照
(1)日医雑誌136,3 stethoscope
(2)日本医事新報 57-62 2008.9.20 No.4404
(3)Medical ASAHI 2011 July 31-33